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DARKER THAN BLACK-黒の契約者-

DARKER THAN BLACK-黒の契約者- Blu-ray BOX突如東京に出現した謎の不可侵領域《地獄門(ヘルズゲート)》。時を同じくして世界中で確認されるようになった、《契約者》と呼ばれる特殊能力を持つ者たち。ゲートの秘密と契約者の未来を巡る戦いの果てに待つものとは…。(Amazonのあらすじ紹介より)
 第二期のDARKER THAN BLACK -流星の双子-の最終回前ということで、まずは第一期について書いておこうと思い、おさらいで再見。いやあ、やっぱりこの作品いいですねえ。まさにハードボイルド。指をぼきぼき折るのが痛そうなのと(しかもすぐに直ったりせず、ご丁寧に後から痛がってくれたりする)、容赦ない死体描写が出てくる最初の方はちょっとハードル高いですが、そこを乗り越えれば2クール分25話+1話、大人のストーリーにどっぷりのめり込めるはずです。ただし禁煙を始めたばかりの人は要注意。「副流煙には〜が〜ng」なんて禁煙の薦めを何度もキャラにしゃべらせている癖に、作中で吸われるタバコのうまそうなこと、うまそうなこと(除ノーベンバー)。すでに禁煙5年目を過ぎて、日常のタバコに対する欲求は毛ほども感じなくなった私でも、かなり懐かしい葛藤を味わえました。
 設定上は合理的思考のみに基づくはずの契約者たちが、なんだかんだで感情に動かされているところが散見されることも含めて、登場人物それぞれの行動がちゃんとリアリティのある動機に基づいていて、観ていてとっても安心できます。同じ超能力ものでもラノベ原作の薄っぺらいキャラ造形と世界観のとある作品とは大違い(←こちらも変態ツインテール目的で結構楽しく視聴は続けていますが)。ただこの契約者たちの希薄になった感情に関する設定がいまいち曖昧で、ちょっと作品内で活かしきれなかった気もしますね。最初の数話の契約者たちは、ドールのように主体性とまではいかなくても、完全に人間的な感情が失われた冷酷無残なロボットの様な存在として描写されていました。そのおかげで契約者の能力を使えながら人間的な感情も持ち合わせている黒<ヘイ>の特殊性がより鮮明になり、また能力を回復することへのハボックの恐怖が実感を伴って伝わってきて、5,6話が前半の一番の感動的なエピソードになりえたのではないかと思います。3話のスプラッター描写も手伝って、最初の数話を観て個人的に受けたこの作品の印象は、「寄生獣」+「首都消失」だったのですが、その後なんだかんだで表情豊かな契約者たちが続々登場し、凄惨な描写も控えめになったりと、作品全体のイメージも回を追うごとにどんどん丸くなっていったように思われます。このあたり、この作品の根っこにも関わっていそうなポイントで、おそらく銀<イン>の変化と同様、契約者たちも徐々に変化しているのだ、という説明がつくのだと思うのですが、感情表現がそれでも豊かな天国戦争当時のアンバーあたりを考えると、その説明ではちょっと納得しきれないというのが正直なところです。Wikipediaによると、契約者の感情の希薄化というのは、今では「実際には契約者は感情の表出を行わない傾向が強くなっただけ」ということになっているようですが、どうも制作途中で当初のプロットから若干の軌道修正があったのかな、と邪推してみたくもなったりします。もちろん敵味方に限らず登場した主要な契約者たちの魅力は、皆が皆完全なロボットでは引き出せなかったでしょうから、いずれにせよ後期の演出も成功なのは確かです。
 全体的にクールな雰囲気が通底している中で、ほどよく挿入される久良沢凱と茅沼キコのギャグパートでは、ほっと息を抜くことが出来ます。化物語を繰り返し観た今になってあらためて見直してみると、キコが真宵が成長して崩れてしまった姿にしか見えなくなっていて、ちょっと驚きました。13話での頑張る発言は、銀<イン>に猫耳をつけたりして遊んでいたところから連想して、まさかの銀<イン>入浴シーンかと期待してしまいましたが、エピローグで一瞬写ったカットからするとこちらの勘違いだったようですね。ちょっとがっかりです。
 そのほか黄<ホアン>のおっさんほいほいエピソードや、菅野よう子による格好良く、美しく、またもの悲しい音楽など、おしゃれアニメの一言で済ますのは見当違いと断言できる、まさに大人の鑑賞に足る近年の傑作の一つと言えるでしょう。