なんでもリスト

気になったことを気ままにまとめます

とらドラ!(その1)

とらドラ! Scene1 (通常版) [DVD]これも名作ですね!エントリを執筆するにあたり何度か見直しましたが、本当に丁寧に作られていて、見るたびに発見のある作品です。大きな表情の変化が無くても、何気ない仕草や間に、登場人物が何を考えているのか、今どういう気持ちなのかが、ちゃんと込められています。

 まずは早くから動きがある大河の心情について時系列を追いかけてみます。とは言っても、とらドラコンビが誕生する2話の時点で既に両想いは完成して、一度物語は完結していると言ってもいいんですけどね。シリーズ通して鈍感で、心情変化が一番遅い竜児(CV:間島淳司)も、この時点で既に大河(CV:釘宮理恵)の喪失への不安を覚えています。大河の祐作(CV:野島裕史)への告白は、実際は「竜児が好きだ」と言っているのと同じですし、それを受けての竜児の「いつまでも傍らに居続ける」宣言は、「こちらこそよろしくお願いします」そのものです。まあこの時点では、2人ともそれが恋愛感情であるとは自覚していませんから、その後の変化を見ると言うことで。

 再見するまでは、大河が竜児への気持ちを自覚し始めた瞬間は、6話の終わり/7話の頭で、竜児が部屋で亜美(CV:喜多村英梨)と二人でいるところを目撃して喪失感を覚えた場面なのではないかと思っていたのですが、見直してみると実はもう少し早くて、4話でラミネート加工する写真を選んでいて表情が変わった場面がそれだったのかな、と思うようになりました。写真を選べなかった直接的な理由としては、ありのままの自分を受け入れてくれた、告白する瞬間の顔をした祐作の写真が見つからなかったから、とあとで大河自身が説明していますが、それに気がついたのは、竜児の「加工さえしておきゃ、いくらお前が転ぼうが水ん中に落とそうが、平気だしな」のセリフがトリガーになっているようです。祐作が告白してくれたときに自分が嬉しく感じたこと、その時の祐作に求めていた物を今持っているのは、ドジな大河をそのまま受け入れて、これからも守ろうとしてくれているラミネート加工=竜児なんだ、ということに気がついた瞬間がここだったのではないかと。実際には大河の口から下の動きしか描写されていませんが、このセリフが終わった瞬間の変化は、写真が見つからなくてつらくなった、というよりは、竜児にかけられた言葉が嬉しくて泣きそうになるのを、歯を食いしばって耐えているように見えて仕方ありません。そのあとの呆然とした表情は、大河の混乱を表しているのでしょうか。結局大河は写真を選べなかったわけですが、最後の屋上での回想シーンで、祐作の顔がシルエットになっているのが象徴的ですね。大河にはもう、その時の祐作の顔をはっきりと思い出せなくなっていることを暗示しているようです。あとは8話までくれば、亜美からやきもちタイガーと表現されるくらいですから、このあたりで大河はもう完全に自覚していますね。竜児を渡したくない、という勝負の動機を竜児に伝えられず、荒れる大河。本人もまだ認めたくなかったのかな。そうだとしても、「竜児は私のだ!」の圧巻の絶叫で完璧にオチましたね(おそらく竜児も)。

 別荘編の9話冒頭の夢は重要なポイントで、やっちゃんとの「三人家族」を暗示しているとともに、8話の大河の絶叫を聞いたこときっかけに、遅ればせながら竜児も深層心理で大河を意識し始めたことを表しているようです。竜児はまだただの悪夢だとしか認識していませんが、大河は祐作と一緒にいても緊張するだけなのがわかり、安らぎを与えてくれる竜児との未来をまんざらとも思えなくなってきます。大河の中で祐作と竜児の位置が逆転したのはここかも知れません。10話の前半で竜児にクーラーボックスを押し付けられて、差し出された祐作の助けを断る大河が意味深です。このあとは徐々に実乃梨(CV:堀江由衣)に竜児を譲らなければならないつらさが表に出てくるようになりますね。10話でいうと、弁当作りを実乃梨が手伝ったことを知って見せる複雑な表情(このあたりで実乃梨の竜児に対する気持ちの変化に気がついた?)、花火の時に話す二人を見たときの寂しそうな表情、街に帰り、先を行く竜児に向かって振り返った際に見せる悲しそうな表情なんかがそれです。また2話では「犬のように私のために働きなさい」と祐作との関係を取り持つことを積極的に竜児に要求していましたが、9話冒頭のバトミントンの勝負を最後に(これも一方的な要求ではなく、竜児にもチャンスを与えているだけ、かなり軟化しています)、大河の側から竜児に同様の要求をすることはなくなります(厳密には、祐作を生徒会から引き離すよううまくやれ、という要求を15話でしています)。

 夏休みが終わった11話からは、実乃梨が本格参入してきていよいよドラマが開始です。11話アバンの校門前で振り向く実乃梨は、一瞬頬を赤らめるというおそらくシリーズ通して初めてのデレ表情を見せてくれます。亜美の別荘で幽霊話(=恋話)をして、見てもらいたがっている幽霊(=竜児)がいるということがわかってから、ようやく異性として竜児を意識するようになったということではないかと。ただここの文化祭編の3話では、まだ竜児と実乃梨の間のベクトルが直接進展して三角関係になるわけではなく、竜児ー大河ー実乃梨のV字関係がメインですね。竜児と実乃梨それぞれの大河の幸せを祈る気持ちが、大河の父親を巡って違った形で表出し、ぶつかり合うわけですが、大河がどちらを選んだかといえば、一応は竜児の選択を受け入れているわけです。実乃梨本人はやはりつらかったでしょう。最終的には実乃梨の選択が正しかったことがわかるわけですが、どちらも心から大河のことを思っていたということを、三人が三人とも理解できているので、三人の中には遺恨は残りません。それで福男レースから後夜祭にかけて、ようやく竜児と実乃梨のラインが完成したという感じですね。14話のゴールの写真にからんだ会話などから、この後は自分が竜児を好きだということを、実乃梨本人も強く自覚しはじめたことが伺えます(亜美も鋭く見抜いてます)。一方で、大河の心情に注目すると、このエピソードでは竜児と実乃梨のラインの成長に伴って、それまで予感でしかなかった竜児の喪失を、かなり実感してきた感じですね。11話終盤でマンション前に現れた父親に大河が向かうまでのやりとりでは、竜児を肯定的に認めるセリフを、おそらくシリーズで初めて大河が口にするのも注目かと。他に12話には、「モルグにぶちこむ」とか、シリーズ全体を通しての重大な転換点にもなっている14話ラストのやっちゃんのセリフが、竜児とやっちゃんの会話に限れば初登場するなど、結構大事なキーワードがちりばめられていました。

 もう既にちょこちょこ言及してますが、他にも竜児が亜美に掛けた一言など、文化祭後日談に当たる14話も後につながる大事な要素が満載です。一番すごいと思ったのは、竜児から始まる各人のモノローグが終わった直後、ED入り前の大河のアップ。自分の願いはなんなのか自問する友人たちの中で、大河の願いだけは観る人にちゃんとわかるようになっていたんですね。一瞬のカットなので最初は気がつきませんでしたが。

なんだかまだまだ書きつくせないので、エントリ分割します
よろしければ関連記事もご覧下さい。
iTunesで主題歌を購入icon