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DARKER THAN BLACK-流星の双子-

DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1) [DVD]地獄門の謎を巡る契約者たちの戦いの果てに起きた未知の災厄“トーキョーエクスプロージョン”から2年が経過。しかし、人の心を持つ唯一の契約者・黒の行方は依然不明で…。(Amazonのあらすじ紹介より)
というわけで、DARKER THAN BLACK第二期-流星の双子-です。今期はよりとっつきやすく、対象層を広げることを強く意識しているようで、-黒の契約者-のハードテイストはかなり弱められており、かわりに僕っ娘ヒロインの蘇芳(CV:花澤香菜)の萌え要素が強調されていました。花澤さんはこばと。などを観るとわかるように、最近の上達ぶりは目をみはるようですが、それでも序盤にあったような感情の奔流を押さえきれないシーンでは、ちょっと声が上滑りしてしまっていてはらはらさせられました。一方で、契約者として覚醒してからは、いい感じに感情表現が抑制されていて、絶妙に「うまい棒」でしたね。途中流れたむずがゆい挿入歌も、私的にはアリです。
ただし丸くなったとは言え、冒頭で登場した一期組のエイプリルもあっというまに黒<ヘイ>に殺されてしまうように、登場人物(特に契約者)の命は容赦なく奪われていくし、一期の良心だった黒<ヘイ>も、長髪、無精ひげ、酒浸り、無表情のDV野郎と、二年間の間にまさに黒化していて、シリーズ特有のダークなところも健在でした。いろんな意見はあるとは思いますが、私的には今期のNo.1だったかな、と。瀬戸豪三郎やボビーを快演した、三宅健太演ずる鎮目の変態具合も光っていました。
さて最終回ですが、一期に負けず劣らずもやもやな終わり方でしたね。再見などしてみて、ざっくり考察したところでは、一番ストレートな解釈は、
・紫苑はゲート内に入ることで、偽りの空の外側に、なにかが一つが違う(=ゲートがない)地球まるごとのコピーを、ドールネットワークによって収集したデータを利用して作成した。
・MEネットワークを通じて収集した「人間」全ての記憶を、スーパーコンピュータの部屋の中心にある巨大な流星核を利用してコピーに定着させた。
(・ゲートの支配下にある契約者とドールは、ゲートを超えて偽りの空の外にはコピーし得ない?)
(・イザナミはゲート支配下の契約者やドールの魂/霊を回収、収集している?)
(・イザナミと紫苑の「取引」とは、紫苑がイザナミのコピーを作成する見返りに、イザナミが蘇芳の魂/霊をゲートを超えて地球のコピーへと運ぶこと?)
(・ジュライが地球のコピーにいけたのは、蘇芳と一緒にいたいという願いがゲート内で叶ったから?)
といったところでしょうか。紫苑の抜かれた魂は、その他の魂と同様イザナミの周りをまわり始める描写があり、一方地球のコピーには、蘇芳とジュライ以外のゲートに関連する契約者、ドールはいませんでした。水族館でジュライの手を引いていたのはエイプリルかノーベンバーになるのが普通の演出だと思うのですが、手しか写っていなかったのもちゃんと意味があるのでしょう。
これはSFや哲学では古典的な「自己の完全なコピーを作れたら、それは自分か他者か。作成と同時にオリジナルを消去したら、それは死なのか否か」という命題に密接に関連しますが、この計画自体は人間がどうとらえるべきか、かなり難しい話ですよね。全人類がまるまるゲートのない世界にコピーできるなら、オリジナルの地球から全人類がいなくなったとしても、それはそれで形を変えた全人類のコピー地球への移住に相当して、黒<ヘイ>やニックが夢見ていた本来の星空を取り戻す立派な手段の一つだと考えることもできます。もちろん上記の命題がいつまでも取り上げられるのは、コピーを他者、オリジナルの消去を「死」ととらえ、それにあらがう考え方も立派に存在するからでしょうね。また-黒の契約者-のラストとの関連を考えると、仮にこの計画が契約者やドールを切り捨てるようなものであれば、人と契約者の共存を望んだ黒<ヘイ>の選択とは相容れない選択なわけです。
他方、こちらの地球に残された契約者やドールたちは、あとはイザナミ=黒い銀<イン>に魂を抜かれるだけの運命のように見えます。三鷹文書の「天地二つに裂かれて」ってのは、地球が二つになったことだけでなく、銀<イン>が二人に分かれたことも表しているのではないでしょうか。分裂した銀<イン>たちは、「(分裂が定着しないから?)まだ間に合うので殺して欲しい」と黒<ヘイ>に語りかけます。しかしながら黒<ヘイ>は流星核の破壊とともに取り戻した物質変換の能力(これは、対契約者装置の フィールド内ではBK201の契約者としての属性は単に消滅したのではなく、同じフィールド内に存在していた流星核に移動していた、ということかと。実際、何らかの光が流星核に飛び込んでいく描写がありました。白<バイ>の物質改変能力の所在が流星核内だったからこそ、蘇芳の対戦車砲はペンダントから毎回生み出されていたのでしょう)を使って、白<バイ>のときと同様、白い銀<イン>を融合してイザナミを温存する結果になってしまったのかも。あるいは、コピーの生成で銀<イン>が入りうる体が二つになったわけだから、物質変換能力は白い銀<イン>と黒い銀<イン>の切り離しに使われた、という可能性もありますね。いずれにせよ予言の成就は避けられず、双子ドールの「ゲートがまた開いた」の言葉と共に銀<イン>のコピーにイザナミが定着して、「門よりいずるもの」が覚醒したと。契約者以外の普通の人間からも魂を吸い取るほどパワーアップしているように見え、三鷹文書の「ただ争いがはつる事無く続くのみ」通りの不吉な未来が予見されています。争う両者は、分裂した銀<イン>をそれぞれ内に秘めている黒<ヘイ>と銀<イン>のコピーなのでは。それでもラストショットで空に輝いているのは、今や銀<イン>と共にある黒<ヘイ>の偽りの星ならぬ希望の星なのでしょうね。

BD・DVD偶数巻に収録される予定の-黒の契約者-外伝も楽しみですね。現在先行公開されているPVでの黒<ヘイ>と銀<イン>の「俺はお前を独りにしない」「嘘」のやりとりが、まんま蘇芳とも交わされているのが(単なる販促ネタかもしれませんが)興味深いところです。再見するとここ花澤さん改心の演技ですね。棒とか言ってすみません。正直感動しました。銀<イン>を抱いて歩みさる黒<ヘイ>がどういう選択をしていたにしろ、外伝でのこの言葉への黒<ヘイ>なりの回答なんだろうなあ、とちょっとしんみりしてしまいます。